小沢健二「Eclectic」




前作以来5年ぶりとなる4thアルバム。オザケンの中でも異質を放つこの作品。ベースラインと鋭いドラム音に、色っぽくなった彼のボーカルが複雑にコーラスとの素晴らしい絡みを見せる。その濃密な絡みは、空間全てを包み込むといっても過言ではないだろう。優しく、何かを求めるように広がるボーカル・・・・本当に圧巻である。こんなにボーカルを心地よく感じさせる作品が一体どれだけあったであろうか。


③「麝香」はすげーいいーマジ名曲だなあ。「愛の火の煌き 踊る月夜の前に 泉のように驚き いま心の中を満たす」の部分なんて心になんでこんなに染み渡るのかわからない。⑥「∞(infinity)」なんか聞いてて鏡を見ている様でドキドキしてしまうとともに、最近読んだスティーブンスン「ジーキル博士とハイド氏」をなんとなく思い出してしまった。⑧「今夜はブギーバック」これが一世を風靡したあの曲か。なんだこの変わり具合。⑦「欲望」が終わったとたんに『ホワンホワンホワン・・・』とこの曲のイントロが始まったとき、自分は鳥肌が立った。


このアルバムは同じようなリズムでガチガチに固められた不思議な空間を創り出す。その空間は現実には存在することはない。非現実が、自分をどこかへ連れて行く。その空間の中で響きわたるボーカルたちと、それによって脳内へと自然と流れ込む歌詞。彼が何を表現したいかなんてどうでもいい。自分は、家の中で夜空を眺めながらこのアルバムを聴き続けたい。