志人/玉兎「Heaven's 恋文」




降神志人(シビット)の1stアルバム。なのるなもないとの降神では、現実に対する反抗というか、そうした訴えるような要素が多い世界が多い気がしたのだけれど、こっちではもう完全に彼の世界だと思う。こんなに不思議なHIP-HOPは本当に初めて聴いた。


志人の口から出るリリックは、ふにゃほにゃっと変幻自在である。言葉の組み合わせの表現に続くエコー音と、⑤「大地」や⑦「一生に一度愛した人」の「レン・レレン・レレレレレ・レン〜♪」などに代表されるような口ずさむような声が、あまりにも気持ち良く響き渡ることで、このアルバムの独特な世界観を一気に作りあげているのだと思う。前半(①〜⑥)は自然世界を彷彿とさせ、中盤(⑦〜⑯)は江戸時代の演劇を見てるような歌など、様々な「ショートフィルム」が並べられていて、最後(⑱〜⑳)はただただ感動する景色が並ぶ。このような構成が、何回聴いても飽きない秘訣なのだろうか。


中でも②「bluesman walking」、⑤「大地」、⑨「暗殺者の恋」(不思議なエロス!)、⑬「私小説家とカラス」、⑱「ありがとうさようなら」、⑲「LIFE」がとても好き。特に⑱→⑲の流れは、深く涙腺を刺激するだろう。僕はよく志人を「シジン」と呼び間違えてしまうのだけれど、彼は間違いなく「詩人」であると思うし、それだけはあながち間違っていなかったのである。