二階堂和美「二階堂和美のアルバム」




今更なんだけれども、二階堂和美の五枚目ぐらいのアルバム。前回までの、悪く言えば宅録というかやや引きこもりがちな、取れてしまう感じの音楽とは異なり(もちろん二階堂和美にはそんな言葉は全く当てはまると僕は思わないけれども)、様々なアーティストとのコラボレーションによるバリエーションの中で外に向かって、活き活きと歌うような、今までのアルバムと違う二階堂和美の姿がこのアルバムにはある。参加アーティストには渋谷毅、SAKE ROCK、テニスコーツ赤犬など。弾き語りとどっちが好みかは分かれたり、両方好きな人もいたりするんだろうけれども、彼女が決して弾き語りだけのアーティストではないことを示してくれていたと僕は思う。


友人と、彼女の曲は、本人が全部作ってるのではなくて、(当然「アイレ可愛や」は除くとして)歌詞はもうこれは完全にイルリメ(鴨田潤)が作ってるんじゃん!なんて話をして、僕らは全部二階堂和美が作ってるもんだとてっきり思ってたから、複雑な気持ちになったりした。実際イルリメの曲は聴いたことなかったので「www.illreme.com」なんて聴いてみたけれども、まー少し変わったラッパーだなーとかノイズが耳に悪そうだなーとか韻を踏んだ言葉は確かにいくらでも出てきそうだなーなんてことは考えたけれども、この人から生み出されたとは正直あんまり考えられなかった。それでも実際言葉の『アヤ』を使うのはすげー上手いと思ったし、やっぱり彼のプロデュース能力をこのアルバムで認めざるえないのかとも思う。


①「レールのその向こう」はピアノに声が響き、何か力強く一歩が踏み出せるような強さをくれる曲。②「なみだの色」はこれがライブで聴いた初めての曲で鳥肌がたったというのも大きいのだけれど、イントロの涼しげな音から入る彼女の声が非常にいい。帰り道の、夕焼け時の美しい風景を見せてくれる。③「あの子のあの頃」は微妙な距離感を表すような切ない曲。④「今日を問うpart2」はイントロの人間ホルン?も、この流暢な緩急激しい歌声も、彼女ならではの曲、と言えるのではないだろうか。この曲は弾き語りよりも悪くなかったわけではないけれども、レコ発ライブで共演した時がすげーかっこよくてやばかった。⑤「アイレ可愛や」は笠置シヅ子の曲。実際そのうちカバー集なんかも出すのではないだろうか。というか出して欲しい。⑥「いってもたってもいられないわ」は一転してとっても楽しい曲調に。実際この曲を歌ってる彼女が一番楽しそうだから、こっちも楽しくなるんだろうと本当に思う。⑦「long torch song」や⑧「Lovers Rock」を聴いてると(③「あの子あの頃」や⑩「虚離より」なんかもそうなんだけれども)本当に微妙な距離感のつらーいけれども、なんかこうしちゃう感じっていうのはすごいグッと来てしまう。⑨「絵空葉書」はのんびり空を見ながら物思いに耽りたくなるような曲。⑩「虚離より」は途中の一つ一つの言葉が空気を張り詰めさせてドキドキさせてくれる。⑪「Temperature of Windowside」は彼女自身は「澱んだフランスのような所からジャマイカのような所へ抜け出していくような曲」ってな感じで表現してた。彼女の踊りを見ながら、楽しく聴きたいインスト。⑫「カーテンコール」はふにゃふにゃっと力を抜けさせてくれる優しい楽しいインスト。⑬「日向月」は王道なポップ、最後に気持ち良く背筋を伸ばせる、元気をくれる曲。


様々なアーティストに対して、様々な、想像以上の変化した姿を見せてくれる二階堂和美。そんな彼女がマジックを呼んだ素晴らしいアルバム。歌が好きな人はぜひ聴いてみてください。