曽我部恵一「Sketch Of Shimokitazawa」




下北沢らへんでしか売られてなかったのが、全国流通版となって登場したアルバム。作品としては、アコギを思う存分使っての引き語りのような曲がメイン。ソロになってから、段々といわゆる「ロックンロール声」となる曽我部さんが増えてきたわけだけど、そっちはどちらかというと全身が痺れる感じだけれど、こういう引き語りの方が心にしみる。②「七月の宇宙遊泳」はシンプルだけど21分にも及ぶ長い曲なんだけれど、ギターが空間を優しくして「あなたの愛だけが人生に必要」なんて切ない声で歌われてしまうわけだからたまらなく良い。⑤「jellies」は「瞬間と永遠」の「white tipi」系のリズムが冴えわたる曲。⑧「Oh!ブルーバード」は溝田志穂という女性とのハモリが美しく響き渡る。


曽我部さんがタワレコで下北沢の道路計画に反対しているのが貼られていたけど、そういう意味も含めて、下北沢の情景などをやや内省的に描いているのだろう。途中に「現状Ⅰ」・「現状Ⅱ」なんて曲を入れる意味は、全然下北沢を知らない自分にとっては無意味なのだろうけれど、付近の人には感ずるものはあるのだろうし何より本人にとっての「形に作った意思」として意味をなすものなのだと思う。優しいアコースティックなアルバム。