ダニエル・キイス「タッチ」




1968年に発表された作品だが、最近改訂版が出版されたので購入して読むこととなった。


平和な夫婦がある日突然「放射能」に汚染されてしまう。実質的な被害者はその夫婦ともう一人だけ。見えない「放射能」は人々に恐怖を与え、彼ら夫婦は「怯える人々」によって差別を段々と受けることとなる。同時に妻の妊娠が発覚し、夫は突然考えもできなかった不幸の訪れから人間自身へ疑いを持ちおかしくなってしまう。そんな重いお話。


心理学者が描く、登場人物の苦悩はあまりにも明確に伝わってきて心が痛い。猛烈に心が痛くなるのだ。夫ダーニーの彫刻はあまりにむリアルに描かれていて、読んでいるだけで気がおかしくなりそうだ。それでも、最後の妻カレンが一生懸命作り出した'彫刻’によってのバーニーの’目覚め’とでも言うべきシーンに感動を覚えた。また彼にやられてしまった。