重松清「流星ワゴン」




ブックオフで安かったので気楽に買って気楽に読んでみた。やはり「トワイライト」と言いたい部分は非常に重なる部分が強い。戻れない過去、結果論からしか考えられず、ただただ人生に後悔だけを覚える中年男性。生きていくことに疲れたその時、オデッセイワゴンに出会い。過去の旅へと出る。そして、当時は一生懸命生きるのに精一杯で全く気づかなかった現実の分岐点を知る。気づかなかった分岐点、けれど映画「バックテューザ・フューチャー」のように都合よく変えることはできるわけではない。やはりテーマは重い。


「分かれ道は、たくさんあるんです。でもそのときにはなにも気づかない。みんな、そうですよね。気づかないまま、結果だけが、不意に目の前に突きつけられるんです。」


こんなことが書かれている。しかし、やはり作者は最後に希望をくれる。現実を受け入れ、そして一つ一つ踏み出すのだ。さらには、自分が子供の頃わからなかった親父の考え。『もし、自分の親父と自分が同じ年で出会ったなら』というとても面白い発想に基づいて、今では癌で死ぬ寸前の親父を主人公と同じ年で登場させ、感動を呼ぶ。そしてワゴンを運転する橋本親子の行く末。読むべき要素がふんだんに盛り込まれた作品となっている。人生疲れた人に生きる力を与えてくれる一冊だろう。『疾走』の方が自分には変態的で好きなのだが。