志人/玉兎「Heaven's 恋文」




降神志人(シビット)の1stアルバム。なのるなもないとの降神では、現実に対する反抗というか、そうした訴えるような要素が多い世界が多い気がしたのだけれど、こっちではもう完全に彼の世界だと思う。こんなに不思議なHIP-HOPは本当に初めて聴いた。


志人の口から出るリリックは、ふにゃほにゃっと変幻自在である。言葉の組み合わせの表現に続くエコー音と、⑤「大地」や⑦「一生に一度愛した人」の「レン・レレン・レレレレレ・レン〜♪」などに代表されるような口ずさむような声が、あまりにも気持ち良く響き渡ることで、このアルバムの独特な世界観を一気に作りあげているのだと思う。前半(①〜⑥)は自然世界を彷彿とさせ、中盤(⑦〜⑯)は江戸時代の演劇を見てるような歌など、様々な「ショートフィルム」が並べられていて、最後(⑱〜⑳)はただただ感動する景色が並ぶ。このような構成が、何回聴いても飽きない秘訣なのだろうか。


中でも②「bluesman walking」、⑤「大地」、⑨「暗殺者の恋」(不思議なエロス!)、⑬「私小説家とカラス」、⑱「ありがとうさようなら」、⑲「LIFE」がとても好き。特に⑱→⑲の流れは、深く涙腺を刺激するだろう。僕はよく志人を「シジン」と呼び間違えてしまうのだけれど、彼は間違いなく「詩人」であると思うし、それだけはあながち間違っていなかったのである。

土岐麻子「WEEKEND SHUFFLE」




土岐麻子のカバー集。今回はいつものjazzカバーではなくて、j-popカバー集。誰もがどこかで耳にしたことのあるような曲を、土岐麻子風に見事に歌いあげていると思う。YMO山下達郎大瀧詠一山下達郎、そしてケツメイシMaroon5など、自分が生まれる前から比較的時代を共にした曲までが8曲詰ったアルバム。


正直、「Debut」のようなアルバムで英語を歌う土岐さんより、僕はこっちの方が好きかなあ。。。意外にこういう感じの歌での英語ってのは悪くないとも思った。けれども、jazz以外では日本語の方がやっぱ好きかな。こうやってシャッフルされていると、何を意図してトラックの順番をいじってるのかが少し気になるけれど、いつも僕はあんまりランダム再生とかそういった機能は使わない、というか結構使いたくないから、アルバムをそのまま聴いてこういう雑多感を味わえるのも粋だと思ったし、悪くないのだと思った。他の人だったら悪く思ったのかもしれないけれど。旅行する時に、こんなアルバムが一枚入っていたら実は結構嬉しいんじゃないかと思う。それにしてもチャーミーな声!

土岐麻子「STANDRDS gift〜土岐麻子ジャズを歌う〜」




土岐麻子のjazzカバーの3rdアルバム。といっても、あれだなあ、正直僕は全然jazzに詳しくなくてあんまり元ネタ知らないなあって恥ずかしく思う。①「Singin' In the rain」にしてもGene Kellyってよりは、『時計仕掛けのオレンジ』の暴力シーンばっか印象に残っているし、②「Norwegian woods」はビートルズだとヘナヘナしたシタールの音をなんとなく記憶してたぐらいだから、全然気づかなかった。他については本当に知らないなあ・・③「You make me feel brand new 」や④「It donユt a thing」はかろうじてどこかで耳にしたような気がするけれど、カバー集聴くのに元ネタ知らなきゃいけないなんて規則はないし!


正直アルバム「Debut」では、なんでこの人こんな微妙な英語使って歌ってるんだろうってずっと思っていたけれど、不思議なくらい今回のjazzカバーでは違和感がなかった。曲の雰囲気の問題なのだろうか。親父さんの土岐英史さんのサックスも気持ちよく響いてくるなあと思うし、ベースとか他のバックコーラスの演奏も随分ちゃんとされていて、だからこそ非常に聴きやすいのかもしれない。Cymbalsよりソロの方が、全然好きだし、普通のポップな日本語の曲も歌ってもらいたいと思うけれど、こういったjazzカバーでも彼女の才能は十分生きるのではないかと思う。夜に暗い部屋にこもって聴いたらすごい落ち着く気がする。といっても僕の親父がいつも夜中に部屋を暗くしてそうしてるから、というだけかもしれないけれど。