syrup16g「パープルムカデ」

syrup16gの初マキシ・シングル。彼らはメジャーデビューしてから「coup d'Etat」「Delayed」「HELL SEE」とシングルを出さずにアルバムのみをぶっ続けに出した彼らの商業的目的を無視した手法は、彼らの音楽と同じように自分に大きな衝撃を与えた。この衝撃は音楽のかっこよさをさらに一段とカリスマ的なものとして自分の中に印象付けたのだ。だからこそ期待した作品。
さて、肝心のこの内容だが、タイトル名の①「パープルムカデ」は、気持ち悪いムカデのPVが印象的。これはシンプル、かつ大胆なややストイックな演奏が一層際立たせる曲だ。②「(I’m not)by you」はアコースティックなメロディーにつらい歌詞が身にしみる。③「回想」はアルバム「Mouth to Mouse」にも収録されていて、アルバムの方がエフェクトが誇張されていてかっこいい。不思議な空間に連れて行ってくれる曲だ。④「根ぐされ」これは内省的過ぎて、それを通り越し、さらに+への変換を感じてしまう。
「パープルムカデ」や「回想」なんかより、ややアコースティックな他二曲の方が自分にとっては心に染みる。「根ぐされ」の後半部のノイズは圧巻。このどうにでも取れるノイズや五十嵐の歌詞などが、聴く人にとってそれぞれの「syrup=甘さ」をまさに引き出させているのではないだろうか。と、かっこよく言ってみたものの、そのsyrupは人によっては非常に苦いものともなるのだからまた驚きだ。
syrup16g「My song」

前回のパープルムカデに続くsyrup16gの2ndマキシ・シングル。
①「My Song」こんな切ないラヴ・ソングが−を象徴してきたように感じる彼らから出るとは予想しなかっただろう。②「タクシードライバー・ブラインドネス」彼らの中でもかなり好きな曲。シンプルなメロディーな普通なロックなんだが
「仕組みの中で子宮に戻る。見すぎたものを忘れていくため。」
なんて歌詞が妙に染みる。心に染みる。このアルバムは未来や過去など時を感じさせる場面が多い。③「夢」に出てくる「俺はもう夢をかなえてしまった」とか④「イマジン」では家族のことを想像して歌ったりしてるし、そんなこと時の考えを最後に⑤「テイレベル」である意味ぶち壊しにしてるんだからまた驚きだ。昔に比べて、楽曲の殺伐とした感じは消えてきている、次のアルバム「Mouth to Mouse」でそれが明澄に表れるのだが。それでも何か違和感を感じ、変な衝動を抑えられなくなることに彼らの魅力があるのだ。
syrup16g「Copy」

syrup16gでインディースだが初のフル・アルバム。五十嵐の絶望ワールドの幕開けをかざるべきアルバム。ギターボーカル・ベース・ドラムのシンプル三人組が奏でるメロディーは痛い。あまりにも心に傷をつける。「Hell See」では皮肉のような感じがさらに痛いのだが、今回はストレートに痛い。⑤「君待ち」や⑥「Deypass」で見せる圧倒的な絶望感・「君は死んだ方がいい」なんて歌詞まで登場して、こんな音楽絶対無理と拒絶反応が出ても、全くそれは人間としておかしいことじゃない。ポップなんだけど、またそれがつらい。
切り裂くようなギターロックに響く五十嵐の声に取り付かれたら最後。③「生活」・⑧「Drawn the light」は演奏・声ともに半端なくかっこいい名曲。絶望の中から、一番下から始める自分探しでもみなさんしてみませんか?「フリースロー」とともに彼らの原点ともいえるアルバム。syrup16gを聞く際には一番最初におすすめするアルバム。
the Flaming Lips「The Soft Bulletin」

the Flaming Lipsの5thアルバム。「Clouds Taste Metalic」の頃とはかなりの方向転換、特に彼の音楽の中核をなしていたように感じるギターワークの減少、これを残念に思ったファンも少なくはないだろう。プロデュースは同じDave Fridmannなもんだから、彼の特長とも言いえる特殊な‘ドラム音’はかなり精練されたものとなってる。①「Race For The Prize」は星が流れるようなメロディーで至福の時を与える素晴らしい名曲だ。そして続く曲はMercury Revを連想させるような、様々な楽器を使ったオーケストラ的音楽となり、夢の世界を広がらせている。⑤「Buggin'」なんかも聞いてて気持ちいい。
といっても今日久しぶりに聞いてみたんだが、演奏はそこまで構築されていないのでMercury Revよりは引き込む力は弱く、ややそういった意味での魅力は自分はあまり感じなかった。そこに逆に完成されすぎなてなくてよいと言う人もいるのだろうが。①「Race For The Prize」を聞いた瞬間は、ゾクゾクっと来て感動したのだけれども、他は何かネジが足りないような、不満が胸に残る。昔はもう少しかっこよく感じていた気がしたのだけれど。前の作品や後の作品を聞いて色々知ってしまうと、この作品は①「Race For The Prize」しか印象に残らない。
でも、歌が下手なのに聞かせてしまうのはやはりすごい。the Smithsのモリッシー、the stone rosesのイアン・ブラウン、art-schoolの木下理樹、そしてthe flaming lipsのWayne Coyne。彼らはバンドという魅力が歌の上手さでのみ構成されていないことを自分に存分に示してくれた。そんなある種の‘人間的魅力溢れる声’に自分ら一部の人間は魅せられ、引き寄せられるのだ。下手も一歩違えばまさに上手なのだ。